『レアチーズケーキと珈琲』
夏目冬子の休日はカフェ探しから始まる
「今日はちょっと遠出して化学反応を楽しもう」
冬子はそう言うと、軽くメイクをし足早に車を走らせる
車内から見える季節は冬に向かう真っ最中
市内から離れて車で約1時間ちょっと
日が落ちるのが徐々に早くなる
目的地に着いたのだろうか、エンジン音が止み扉を閉めた。
ジャラジャラジャラ...。ガーガッガー。コポコポッ。
古い年季の入った扉の先には如何にもオールドカフェを漂わせているインテリアのカウンターがそこにあった。
スンッ...。優しく鼻に入ってくる珈琲の香りと、丁度いい音量のクラシックが流れる。
「何名様でしょうか?」
気品はあるが、何処か素朴な感じのご婦人が案内してくれた。
ここの一押しメニューは珈琲とレアチーズケーキのセット
700円で、安いのに尚且つ味が美味しいらしい
友人に聞いた話では
「この2つの化学反応がヤバイんだって!」
という事だ...。
「ケーキセットを下さい。」
そう一言言うと、冬子はタブレットを取り出し仕事をする。
化学反応かぁ…。珈琲にはちょっとうるさい冬子にとってワクワクするフレーズではある。
待つこと数分。ケーキが先に出てきた。
見た目は少し滑らかさが歪な白いレアチーズケーキだった。
どこでも売ってそうな、真っ平らに寄れのないレアチーズケーキと違い、布でも被せていたのであろうか?という感じの外見。
次に珈琲。
待ちきれない冬子はスマホで写真を撮ると、白いカップを手に取り香りを楽しむ。
柔らかくて酸味の少ない香り。
コクっ。ほんの少量のコーヒを口の中に広げる。
「カラメル…キャラメル?...はちみつ...うーん違う...。なんだろう?」
数回飲んで、表現を探す。
あ…べっこう飴だ!!!味の表現が決まった時の嬉しい気持ち。
口当たり軽いけど、舌の奥でどこかほろ苦さを感じる。
「べっこう飴だ...美味しい...。丁度いいコク。」
さて…一頻り珈琲を堪能したので、友人オススメのレアチーズケーキと一緒に飲んでみる。
「ん??レアチーズケーキがなくなった??ん!?いや…いる。」
何だこれは…。レアチーズケーキの見た目に反してのスーパー滑らかさ&軽さ...。
そして何より、珈琲との抜群の相性。
ゆっくり下の上で優しく混ざる...。
ミルク特有のえぐさもなく、珈琲独特の渋さもない。
でもそこには確かに存在する2つの味。
「化学反応とはこの事か...。凄い…美味しい...。なにこれ...。」
開いてたタブレットを閉じ、味に集中する冬子。
今時のインスタ映えする様なカフェとは違い。昔ながらの喫茶店は集客もきっと衰えているのが現実だが、珈琲の専門知識や入れ方の技術は月とスッポンだ...。
きっと喫茶店が無くならない理由は、そこにあるのであろう...。
但し美味しい所のみ…。難しいなぁ…この業界も…。
何て...専門家気取りな冬子。
「最終的にはオーナーの人柄なのよね…。」
クスッと微笑み、カウンター越しにお客さんと話しをする老夫婦のオーナーを見ていた。
ふと化粧室にたった冬子。化粧室に行く途中にある焙煎室を見つけた。
そこには夕日に照らされながら、専用の焙煎室で珈琲をハンドピックするご主人がいた。
写真に収めたくてカメラを手に取るが、どこか雰囲気を壊したくなくてスっとカメラを下ろす。
この風景を、今この時に見るからこそ、グッとくる風景なのだと...。
冬子は焙煎室を後にし席に着く。
何だかんだで、セット以外のコーヒを頼み飲み干した。
ハンドプロでいれた珈琲はスッキリとした飲み心地を演出するので、直ぐに飲み干してしまう。
ご主人の柔らかい雰囲気と喫茶店内の雰囲気がマッチしている。
結局雰囲気に酔いしれてたら、長居をしてしまった。
閉店まではまだ時間はあるが、今日はこの辺で帰ろう。
冬子は帰る準備をし会計を済ませる。
最後まで物腰の柔らかいオーナーに見送られ、車に乗り込む。
どうやら冬子は満足したようだ。
雰囲気でわかる。
「小春ただいま。車のお留守番ありがとね。」
そう言って冬子は私のアタマを無でる。
そうそう...ご紹介遅れました。
私の名前は『小春』冬子の飼い犬(パグ)でございます。
今日も私は冬子と一緒に一日を過ごしております。
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